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日々点描(7)「Black Swan」後記/虚と実と.

ブラックスワン.jpg

(あらすじ)
ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は、
元バレリーナの母の期待に応えようと、その人生のすべてを
バレエに注ぎ込むように生きていた。

そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、
新人ダンサーのリリー(クニス)が現れ、
ニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、
やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。


はい。僕的に上半期最重要作品です。
なんてったってダーレン・アロノフスキー監督作品。
見逃す手はないす。

まさかシネコンにアロノフスキー監督作品を観に行く
ことになろうとは、思ってもなかったです。


この作品実は、日本のアニメ、故今敏監督の
『パーフェクト・ブルー』の影響を
大きく受けていると言われています。
それは、アロノフスキー監督もはっきりと認めるところ。

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こちらは〜アイドルグループのチャムに所属する
霧越未麻(きりごえ みま)は突如グループ脱退を宣言、
女優への転身を計る。

かつてのアイドルからの脱却を目指すと
自分を納得させ(つつも事務所の方針に流されるままに)、
ドラマ出演でレイプシーンを演じる。
さらにはヘアヌードのオファーが来るなど、
アイドル時代からは考えられなかったような仕事をこなしてゆく未麻。

しかし、人気とは裏腹に未麻は現状への不満を募らせ、
アイドル時代の自分の幻影さえ見るようになる。
レイプシーンやヘアヌードは本当の自分の姿なのか。
自分が望んだことなのか。。。〜

というような作品で評価も高いです。

どちらも虚と実の暴走の果てを描いている作品だけど
「ブラックスワン」は「パーフェクトブルー」を
きれいに裏返した構造になっています。

「パーフェクトブルー」では、清純派アイドルが汚れ役を演じる時に
「白い」清純派としての自分に苛まれ、
演じてるドラマと現実の区別がつかなくなっていきます。
そしてヒロインが人格分裂的に。。。

「ブラック・スワン」では、清純なバレリーナが黒鳥を演じる時に
「黒い」代役に追い詰められ、
演じる「白鳥の湖」と現実の区別がつかなくなっていきます。
鏡の破片を使って代役を倒すと、
実はそれは人格分裂した自分だったと判明します。。。


◎とっても分かり易いスライド
http://www.mythoman.com/post/2858799810/black-swan-vs-perfect-blue


◎「ブラック・スワン」の予告編に「パーフェクトブルー」の
映像をはめたもの。


ま、それはともかくとしてナタリー・ポートマンの演技。
「おかしな母親に育てられた自傷癖のあるバレリーナが、
プレッシャーで現実と妄想の境目が分からなくなっちゃった話」
なんですけど、ナタリー・ポートマンが本当にいじらしくて、素敵でした。

ニナを縛る母親は「娘の成功を祈りつつも、
本当は自分のことを超えられるのも怖い=永遠に現状維持で馴れ合っていたい」
という、良い感じにイヤな性格でなかなか良かったです。

役者さんたちは全員素晴らしくて。
リリー役に選ばれたミラ・クニスの存在感。
いかにも「“ホワイト・スワン”のニナに対する“ブラック・スワン”」
という感じで、気の良い女性っぽくも意地悪にも見えて、
とにかく雰囲気がエロチックなんです。

このリリーの存在がどちらかというとバレエ一筋に打ち込んできた
ニナの心に大きく揺さぶりをかけてきます。

自分の知らない世界を知っているリリー
何も知らずにただバレエのみに打ち込んできた自分...


けれど、思うに人間、「白」だけのはずはありません
誰の心にも「黒」は在る。

ニナが完璧な「白鳥」演じるようになればなるほど
無意識下のニナの中では「黒鳥」も育つ。。。

虚と実のバランスゲーム。
それはやがて肥大化していき、ニナ自身を取り込んでしまう。

人間の心に潜む様々な対極の世界
名誉と恥辱、喝采と罵声、自由と束縛、享楽と禁欲、
正気と狂気、受諾と拒絶、緩和と緊張、自己再生と自己崩壊、
生と死、そして男と女…

アロノフスキー監督は実に丁寧というよりは
一気に突き崩すようにこの部分に踏み込んでいます。


「虚像」を殺して「白鳥」としてダイブし「完璧よ…」
という台詞を残すニナ。
と、同時にそれは「実像」をも殺してしまっていたのだと。。。

全ては彼女の心身がもたらした幻想。
そう考えると成功したと思った舞台も幻想なのかも。。。

うーん、、考えるほど「パーフェクトブルー」になってしまう。
今敏監督の意見が聞けるものならば。。。

「虚と実」は意外と身近で、それも間一髪背中合わせのところで
僕らを見つめているのではないか、そんなことを感じました。

話題作のこと書くのは難しい。。。
いろんなとこから引用させてもらったけれど。
皆それぞれの「白鳥」「黒鳥」があるのだろうから。。。

ナタリーポートマンのゴールデングローブ賞
主演女優賞は納得の演技であることは間違いないです。
これで、スターウォーズのアレ、お姫様イメージ吹き飛ばしですね。


トウシューズの床と擦れる音や爪やすりなど
イヤなところは満載です。

それでも「π」「レクイエム〜」以来の
「虚と実」を自由に行き来する独特の感覚は
アロノフスキー監督ならではだと思いました。


流れまくってる予告編。


◎ライムスター宇多丸師匠のポッドキャスト
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20110521_hustler.mp3

個人的には、「鑑賞後、席を立てなかった度」は
「ブルーバレンタイン」のが上かなー。

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